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蓬莱通信

ジュエリー ジェムヒロ

先日、宝飾店の改装工事を手がけさせて貰いました。「リーズナブルな価格帯で、尚且つ精度の高い、美しいフォルム」。まさにそんな要求がテーマのような仕事だったなーと振り返り、一言で表現しようとするとタイトルのような印象が胸に残った仕事でした。工事中に起きた印象的な小さな事件を軸に工事の裏側を御紹介していきます。

「家具を作って欲しい」
このお施主様はインターネットの当社HPをご覧いただき、施工例の家具をみて、まさにタイトルのような仕事を期待して、新設店舗に設置する造りつけの別注家具の製作を依頼してくださいました。打合せに望んだ時、既に内装工事を依頼する別業者さんが決まっていたにも関わらず改装前現場をみた私の提案が良かったのか家具だけの仕事のつもりの打合せがいつの間にやら造作も、電工も、看板も細かい仕事もと段々増えていき、デザインをも含めて全体の工事受注に発展した、嬉しい仕事となりました。

「照明器具にこだわりがある」
先ず最初に取り組んだのは、現在営業中の店を引っ越すに当たり、使える家具什器は持って行きたい、その上で足りない家具を発注したいので、新旧の調和をテーマにして欲しい。そして、商品のより正確な質感と色合いをお客様に伝える為に、現店舗で出来ていないこだわった照明計画をしたい。という要望に答える設計をすることでした。平面計画はお施主様が既にされており、それを基に現地実測をして驚きました。かなり正確である。逃げどころや、スケール感、機能寸法までほぼミリ単位での修正しか必要ありませんでした。お施主様は、「永年営業しているから自分の欲しい寸法や都合の良い大きさは理解している」とおっしゃったが、プロ顔負けの基本計画に舌を巻きました。後は私が新旧調和を考えたデザインをしていくだけで、スムーズに進んでいきました。

「電気の容量が足りない」
例のこだわるべき照明計画の話の途中で、問題が起きました。電気屋さんによると、どうやら既設の幹線ではとても計画通りの照明個数が賄えないらしいのです。幹線を大容量に入れ替える工事は、時間もかかるし何より共用主幹からの配分に限りがあるので、折衝事も出てきて、結構手間が掛かるので避けたほうが得策でした。そこで、照明計画はプロの力を借りることとなります。専門家が考える容量が小さく有効な配灯での計画はランニングコスト低減にもつながり相乗効果が期待できるからです。その計画を基に天井高さを決定しました。(これが次にちょっとした問題を招くのだが、、)  

「天井が低い!?」
当初案より、照明器具の数を減らす事と間接照明や天井の高低差をなくす事で、影を減らし有効に商品に光を当て得る高さで尚且つ現店舗より高い天井高をキープできるラインを新店舗の天井高さに。これを目標に現店舗より10センチ高く仕上がりました。しかし高い天井高を期待されていたお施主様は「高くなった気がしない」とのこと。現店舗より10センチ高くなっているのは確かなのだが、新しい店は古い店より広いので、高くなったように感じないのです。私もそれは同感だったので、照明に影が出るリスクを承知で、梁囲いをして高くならない部分は残置してでも上がる部分は上げることに打合せし、天井を造り直しました。お施主様も大納得、私も少し不安(影の事)は残ったが前よりずっと広く感じられるようになったので「これで、正解だ」。と思いました。

「決定した壁装材が無い!」
壁には光沢のある硬い石目調の素材を決定していました。ところがいよいよ施工間直になってもう一度在庫確認を依頼してみると「在庫0です」の冷たい返事。「えーっ」目が点になるような事件。仕方なく代替品を探すことにしましたが、新旧調和をテーマにしていた家具にも同じ材料を使う予定だったので、かなりこだわって探さなければならなくなりました。どうにかお施主様のお眼鏡に適う品物が見つかったある日、一連の作業や判断を評価して下さったのだろうか、お施主様からこんなご相談がありました。

 

「自宅のキッチンと玄関扉が、、」
現在工事中の現場には売り場とバックヤードと事務所があり、事務所には当然、洗面所や給湯室、トイレが必要なので、計画の範疇には入っていました。「自宅の流し台が、傷んではいないのだが、使いにくいので以前から取替えを考えていた。現在の物を事務所の給湯室に移して、自宅は思い切って新設したい。」「ついては工事の際に玄関扉の開閉不具合も見て欲しい」という相談でした。修理メンテは当社18番。喜んで、お引き受けする事にしました。

「ディスプレイ工事に挑戦」
現場も日一日と完成に向かい例の新旧調和を考えた家具も続々と現場入りし取り付けられていく最中にそれは起きました。「ケースの中のディスプレイは出来ないか?」私はこんな仕事をしているのだが商品の陳列や見せ方については疎いほうなので、初めは断ろうとした。が話をよく聞いてみると、こんな事でした。{商品のディスプレイにはこだわりと、作戦が必要で、それは御自分で、手配されるのだが、古い什器の中にあるような小さな色違いのステージや、演出ボードなどが新しく作った家具にはついていない。そういったものを作って欲しい}というので、見本や例を見せてもらい話を聞きました。それらは専門の材料で殆どが装飾されていましたが我々の使う内装材料でも遜色なく作れそうに思ったので、やってみることにしました。使用したのはイス貼り用のレザー、スゥエード調の壁紙、石目調のカッティングフイルムなどです。やってみるとフイルム、レザーはおとなしかったが、スゥエードには手を焼いた。湿気が来ると皺が入ってアイロンを当てても直らない。ガラス扉の金物がレールにこすれて出る微量の屑などが掃除しても落ちない。などあり、結局、何度と無く改良工事をしなければなりませんでした。

「取り外した看板」
看板、サインも新旧調和を目指し使えるものは移設する事に努めました。何故なら現店舗のデザインや装飾は飽きが来ず時代の流行り廃りにあまり左右されず、こだわったスタイルなので、お施主様が結構気に入って居られたからです。実際新店のデザインも基本的には現店舗を踏襲しました。そのおかげで常連のお客様は新しい店もすぐに認識でき迷わずに脚を運んで頂いているそうです。 

「古い家具の再生」
移設した家具と新しい家具は作られた手も違うし年代も違います。どうしても調和は難しいのです。そこで、隣り合わない家具については違和感が無い程度のアレンジをデザインに加え違う形の家具に仕上げました。が、隣り合う家具はそうは行かない。可能な限り似せてコピーしましたが、最終的に色が合わない。お施主様は理解を示してくださいましたが「正しく、美しく」の人柄です。私としてはやり残した感があり、ケースの縁の新色での塗装し直しと古い腰部分に、例の石目パネルを貼り付ける事を思い立ち実行することにしました。急に夕方から思い立ってやり始めたので、結構遅い時間になってしまいましたが、こちらの思いが通じたのか、お施主様も途中退場せずに雑談など交えながら私が終わるまでお付き合いしてくれました。私は物販店舗は飲食店舗に比べ施工数が少ないので、雑談の中の話題に結構参考になる事があって、勉強になりました。良い経験をさせてもらえた一現場でした。

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