施工事例

店舗造作

居酒屋 改装工事

居酒屋 改装工事1
滋賀県 長浜市

DATA
設計施工


居酒屋の内装をオーナーシェフの施主様に合わせて、カウンター割烹スタイルの厨房に改装工事させていただきました。
居酒屋 改装工事2 その馴れ初めから竣工までの一部始終をご紹介します。
そのお客様は若く、初めて自分がオーナーとなる店創りをするということで、理想も高く(しかし若さゆえ予算は限りがあった)請け負う工務店、設計事務所等は大変な労力がかかることが予想されました。

改装前の様子

改装のイメージ

「この店をこうゆう風にしたいんや」上の三枚の写真(彼の理想とするイメージ)から、私とその若い板前さんによる設計施工が始まりました。

上の写真の店は古くから地元で、郷土料理を主に営む御食事処でしたがこの程おめでたく近所に新装開店され屋移りされた事から、私の施主にチャンスがやってきたのでした。
やる気マンマンの施主の情熱にほだされ、「面白くなりそうだ」と私も突き動かされるように打合せを始めましたが、すぐに壁に突き当たる事となります。「予算が足りない!」 彼の希望を細かに聞き積算を始めたところ当初の彼の腹つもりとは到底かけ離れた予算編成が出来上がってしまったのです。普通なら全体的にローコスト化をするために全体減額案を、という流れになりますが私のある提案で、彼の気持ちは決まりました。飲食店には大きく分けて二つのゾーンがあります。それは厨房と客席です。私はいいました。

「初めてだからあれもこれもと、欲が出る気持ちはよく解りますが、予算には限りがあるので、低予算で、いいお店を作るには{一点豪華主義}的な予算配分が必要です。」「お客様に対する雰囲気つくりを第一に考えるのか?(客席に予算をとるのか)美味しいお酒と食事を振舞うために自分の思い通りの厨房を手にしたいのか、二者択一をしましょう」私にとってはどちらの場合も手落ちが残り、クレームの元につながる事はリスクとして承知のことでしたが、彼が私を選んだ理由「ぼくは浜野さんと仕事がしたいんや。安く工事してくれる工事店や素晴らしい設計を望んでるわけじゃない」という言葉から、彼がどちらを選び結論を出すかは想像がつきました。

「厨房」 二人の心は決まりました。 (彼にとっての)「美味しいお酒と素晴らしい料理を提供できるスーパーキッチンを造ろう。」 設計の為の打合せの8割以上を厨房設備の事に費やし、尚且つ客席も(日曜大工レベルになるかもしれないが)それなりの予算を残しつつイメージ作りに一役買わなければ意味が無いので、膨大な量の打合せ資料と時間が必要になってしまいましたが、何とか予定通り着工する事になりました。

工事の方法は設備、建装工事は私が管理し、装飾は彼が提案することに対して、できるものは彼が、出来ない物は私が補助工事する。という少し変則的な進捗状況になってきましたが、先ずはどうにか滑り出してきました。

工事も中盤に差し掛かったある日、施主から一本のメールが届いた。
「看板にこだわりたい。こんなのを購入しようと思うのだがどうだろうか?」添付されてきた写真(下の写真)に写っていたのはたいそう古めかしい杉の変木と切り株のようだった。


看板のデザインプラン

※お施主様より携帯メールで送られた画像

「神代杉、いうらしいんや。使えそうなにおいがぷんぷんするでしょう?これを加工して、看板にならんやろか?」 施主の熱気が襲い掛かってきた。
工期は思ったより(天候等の加減もあり)遅れ気味だった。調整事項もまだたくさん残っていた。(時間が足りないのにまた手間のかかる難題か。)と心の中では思ったが、施主は私と仕事がしたいのだという命題を思い出し、(少々引きつりながら)私は言ってしまった。
「うんいいものが造れそうですね!」
その日から現場を進行しつつ看板のデザインを考え、施主のイメージを聴取していった。ほぼ2種類のデザインは決まった。

2週間ほどして手元に届いた神代杉を見て思惑が違ってしまった。
左上の写真の物のほうが大きい看板に、左下の物を小さい看板にデザインしていたが逆だったのだ。左下のやつがとてつもなく分厚く、でかい。
「今まで出した提案は気に入ってもらっていたようですが品物の大きさが違うので、有効に働きません。発想を変えましょう。」(透明感のある新鮮な料理を作る板前と伝統ある和食スタイルの合体)彼のメニュー構成を聞いてそう思っていた私はよく見かける黒光りした神代杉の衝立のような看板ではなく、杉の肌合いを生かした手作りっぽいもので、新建材を組み合わせ、他には無いようなものが出来れば、和の風合いに若者らしい雰囲気をかもし出せるのではないかと考えていた。それに黒光りさせるほど磨きこんで、仕上げるだけの時間も予算も無かった。
左下の物にはガラスかアクリル板を組み合わせ、衝立風のスタンド看板に。
左上のは、、、衝立風に使おうと思っていたが背が低かった。壁に取り付けるメイン看板としては横に長すぎる。
「切ってしもたらどやろか?」
施主がぽつんと言った。
「いいかも知れませんね」
私は生かすなら躍動感のある上のくびれ、殺すなら左側のひび割れから端までと思っていたので提案した。
「浜野さんに任すわ、格好良うしてや」


施主と二人で、神代杉をギコギコやりながら、彼が(昼は御食事どころ、夜は酒菜三昧っていうキーワードで、店をやりたいんや)という言葉を思い出し、切り取っていらなくなったほうでそう書かれた札を作って何処かへ掛けるのも面白いと私は思いついた。
「へえ、この木は切った切り口から中まで全部真っ黒けなんやなあ、面白いなあ、この切れ端でも箸置き作ろ」
彼は以前使っていた銀杏のまな板を私に指導をうけながら切り刻み、箸置きを作っていた。
「20年も土の中に埋まっていたのだからそんな色をしているのですよ。箸置きにすればお客さんと神代杉やこの看板のエピソードが会話できて楽しいのでは?」
私は賛成しつつ先ほどの札の提案をした。
「同じことを頼もうと思っていたところや、このくびれの中間に回転する札をつけられへんかな昼は御食事処、夜は酒菜三昧や」
そういう顛末であの看板は出来上がったのでした。

昨日どうにか予定に追いついて、工期の遅れを取り戻した夕方の出来事でした。  

大工さん 日曜祭日返上で、頑張って下さり本当に有難うございました。(キッチンの耐火パネルは加工しにくく重量があるため職人泣かせな面があった。)左官屋さん 遠方仕事にも拘らず夕方暗くなって周りが見えにくくなっても手を止めず仕上げにこだわっていただき有難うございました。ファサードの神代杉とマッチするあの壁の仕上げは「校倉」という和風技法で、くし目の鏝を引いて仕上げる味のある工法だが、決めていた色調ではなく看板に合わせて若干落ち着いた色に加減しながら進めてくださいました。電気屋さん 忙しいスケジュールを縫ってこの仕事を挟んでいただいた上、早朝や深夜にしか時間が取れなくても嫌がらず、お施主様の要望に答えていただき本当に有難うございました。

そして、クロス屋さん、水道屋さん、その他大勢の業者の方々、お施主様と私のこだわりに最後までお付き合いいただき有難うございました。皆さまのおかげで無事竣工する事が出来ました。  が、私の仕事はまだ終わっていなかった!施主にはそろそろ開店準備を始めさせなければならない。しかし彼のこだわりは未だ完成していなかった為、私が受け継いで仕上げる事によって彼の仕込みの時間を確保しなければならないのだ。内装はほぼ仕上がり、厨房も試運転は終了し火が入る状態になっても尚、彼がこだわり続けたこと。これを完成させる責任が私にはあった。(ちょっと笑)

箸置きを完成させること、倉庫の棚を増やす事、背の低い従業員のため踏み台を用意する事。(注意:設計ミスではない、彼はとても身長が高く、彼に使いやすい厨房を用意する事は他の者にとっては全てが高めの位置にレイアウトされるのだ。低い姿勢は板前には結構つらい)実際厨房側と、給仕側面で、2種類の設計モジュールを使用した。

他にも、舟形シンクに置くまな板の脚を作ること。箸置きが終わったら削る筈だった山椒のすりこぎを作ること。包丁ケースを作ること。店が狭く給仕の専用場所が取れなかったため兼ねてより懸案の補助台を設ける事。など等、思いつくことを少し挙げてみても結構盛りだくさんあったが施主との親交を深めつつ一つずつクリアしていった。

 

最後にマイブームのバンブーカウンターについて、少し話そうと思います。少し以前のどこかの現場で和食屋の改装をしたときに小上がりの床に貼ったのですが、オープン前に手直しに行った時、そこのオーナーが店で使う食器を整理する為にその部屋で、皿やら器を床の上に並べたてていました。(その器は信楽焼だったように思う。)バンブーと陶器の色合いの調和がそのときの私にはとても素敵に見えたのです。カウンターの素材選びに何かのアクセントを求めていた今回の施主も、私のこの話とバンブーの見本を見た瞬間、虜になってくれた為に実現しました。この手口で私はもう3件もカウンターに床材を使用(笑)しました。(超硬塗幕仕上の床材なのでカウンターに使用してもクレームは今までないようだが、床材は床材である、一応ことわっておく。

「試食会の準備ができた」と施主が呼んでいるので、話はこの辺で辞めておきます。この店は(私の縄張りからは少し外れているが)、たぶん間違いなく行きつけの店になりそうです。

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